仲間たちと共にベンウィックの混乱を平定したヒョウガは、ベンウィックの王にはなりませんでした。
混乱が収まった当初は、信頼できる仲間たちを全国に配し、あるいは、各地の人望ある人材を登用して、統治に当たらせましたが、彼はやがてベンウィックに共和制を布いたのです。

人々に統率者として選ばれるのは、ヒョウガやその仲間たちであることが多かったのですが、ヒョウガは自分を一介の市井人の立場に置き、決して王というものになろうとは考えませんでした。

しかし、王ではないが故に、国民は彼を“王の中の王”と呼び、その名はベンウィック、ログレスはもちろん、大陸の隅々にまで知れ渡ることになったのです。

ヒョウガと共に、シュンは、自分の幸福であり、ヒョウガの幸福であり、そして、戦乱に倦み疲れたベンウィックの大多数の人々の幸福である“平和”のために努め、そうすることで、あるいはその成果を目にすることで、更に幸福な思いを抱くことができました。


そんな日々の中で、ヒョウガとシュンはやがて気付いたのです。

自分の幸福が何なのかを知っている人、その幸福のために努力する術を知っている人こそが、真に幸福な“王”なのだということに。

ログレスの国からシュンを得ることのできたベンウィックの国の民は、誰もが真に幸福な王でした。

誰もが“王の中の王”だったのです。






Fin.






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