あっぱれ! としか言いようのない瞬の演説から、最初に立ち直ったのは星矢だった。
気力体力尽きかけた様子で、それでも、彼は、必死に瞬に反駁を試みたのである。

「で……でもよ、おまえ、仮にも男だろ。男には攻撃本能ってものがあるだろ」

星矢の知ったふうな意見など、聞くに値するものではない。
その本能の存在自体、あるかもしれないと言われているだけで、確かなものではないのだ。
かつまた、もしその本能が実際に存在すると仮定するならば、それは当然、男女両性が備えているべきものなのである。

瞬は、聞くに値しない星矢の言葉に、やわらかな微笑で答えた。

「僕、攻防一体が売りだから。それに、受けって、実はとても攻撃的な立場だと思うよ。僕は、氷河を自分の中に飲み込もうとしているようなものだし」

このセリフをにっこり微笑って言われた方はたまらない。
星矢と紫龍と一輝は、思い切り戦慄した。


「ま……まあ、男女の場合でも、男は消耗品だしな。男は女性にエネルギーを吸い取られているようなものだ」
『ごめんなさい、もう逆らいません』気分で、紫龍が瞬の味方に寝返る。
瞬は、自分の陣地に駆け込んできた紫龍を、実に暖かい態度で迎え入れた。

「でも、僕、吸い取るばかりじゃないよ。とっても公平でしょ。僕と氷河」
――と。


「〜〜〜〜っっっっ !!!!!!!! 」 × 3(除く、沙織&氷河)

最初から瞬に抗するべきではなかったと深く反省した紫龍の横で、突然一輝がぶくぶくと泡を吹き、ばったーん★と盛大な音を立てて、床の上にブッ倒れた。
恐いもの知らずな無茶無謀で名を馳せた星矢も、事ここに至って、瞬に抵抗することの愚を悟る。
「し…下で受けをしつつ、攻めを攻撃しているわけかー……。最強だな、瞬」

しみじみと――しみじみ、心底から、つくづく、痛切に、星矢は瞬が恐かった。
そして、その瞬を相手に××できる氷河を、実に偉大だとも思った。

が。

「おい、氷河、おまえは……」
「聞くな。俺と瞬のどっちの立場が強いと思う」
「……悪かった」

当の氷河は、瞬ほどには大物ではないらしい。
しかし、それでも、彼は、この瞬と、毎晩、怖れもなく、むしろ自ら望んで、××しているのである。
それは、“愛”の力の偉大さを、全世界に知らしめる、実に素晴らしい事実ではあった。





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