瞬の身に何が起きたのかはわからない。
ただ、『しゅん』が瞬と全く無関係な存在でないことだけは、氷河も認めざるをえなかった。


「ありゃりゃ、瞬の奴、こんなにちっこくなっちゃって」
「しかし、子供の頃の面影は――違った、成長後の面影は、か――残っているな。これはこれで可愛いじゃないか」
――というのが、命を懸けた幾多の闘いを共に闘ってきた仲間たちの、『しゅん』を見たご意見・ご感想だった。
つまり、氷河に手を引かれてダイニングルームにやってきた『しゅん』に、星矢と紫龍は大した動揺を示さなかったのである。
彼等は『しゅん』が瞬であることをすんなり認め、そして、あっさり受け入れてしまったのだった。

それだけならまだしも、
「サイズがどうあれ、瞬に変わりはないんだから、氷河、ちゃんと面倒みてやれよー? しっかし、世の中、何が起こるかわからんもんだなー」
「まあ、そのうち、元の瞬に戻るさ。少なくとも、あと12、3年経てば、確実に元の瞬に戻る」
などと、無責任極まりないことを言う星矢と紫龍によって、氷河は『しゅん』の保護責任者の任を押し付けられてしまったのである。



だが、『しゅん』の面倒をみることは、氷河には、尋常ならざる努力と忍耐を要し、苦難と苦渋を伴う難事業だったのである。
それでなくても氷河は、優しく思い遣りに満ち、細かいところに気がまわり、万事控えめ、自分のことで他人の手を煩わせることはないが、他人の面倒はよくみてくれる、いわゆる“大人”の瞬に慣れていた。瞬とはそういうものだと思っていたのである。
そんな瞬に寄りかかっているのは、むしろ氷河の方だったのだ。

それが、180度の立場の逆転。
氷河にとっては、まさに悪夢、だった。





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