シュンは――瞬は、そして、懐かしい恋人の腕の中で意識を取り戻した。

「瞬… !! 」
氷河が、瞬の瞳に映る自分に狂喜して、その名を呼ぶ。

一度は失った、その瞳。
数年の時を経て再び出会い、またその瞳を失うくらいならと、その瞳の願うことならどんなことでもした。
その瞳を二度失うことは、氷河には耐えられなかったのだ。


「氷河……」

優しい瞳の主は、氷河の髪に飾られたピンクのリボンに手を伸ばし、
「……可愛い」
そう言って、微笑った。

「瞬…… !! 」
もう二度と、たとえ死んでも離せないものを、氷河は力の限りに抱きしめた。

「どうしたの、氷河。痛いよ?」
「まるで死んでしまったようだった、俺は……」

氷河の心配が、瞬にはひどく大袈裟なものに思えたのである。

死。
そんなものが、そんな悲しいことが、自分たちの許を訪れるはずがないではないか。
そんな悲しいことが、たとえ起こったとしても、そんなものの力で自分たちが引き離されるはずがない。


「僕は生きてるよ。ずっと氷河の側にいる」
「瞬…!」

そして、もちろん、氷河は瞬の言葉を信じたのである。
信じて、安堵して、氷河は少しだけ、瞬を抱きしめる腕の力を緩めた。

イブの街を楽しむ人々が、道の脇にうずくまるようにしている二人を興味深げに眺めては通り過ぎていく。
頭に大きなピンクのリボンをつけたデカい図体の男と、純真そうな瞳の少年を。

「可愛い。そのリボン、僕にちょうだい。クリスマスのプレゼントに」
瞬には、そのリボンがどれほど価値があるものなのか、何の説明を受けなくてもわかっていた。何故知っているのかはわからないが、そのリボンがとても素晴らしいものなのだということを、瞬は知っていた。





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