信じてくれる者と信じられる者。
その数はもちろん多い方がいいには違いないのだが、人は、信じられる者が一人いさえすれば、それだけで生きていけるものである。

今の氷河には、瞬がそうだった。
瞬だけが、信じるに足ると確信できる唯一の存在だった。
本来なら家族や友人に向けられるべき信頼のすべてを、氷河は瞬に向けていた。

リスクを分散させるために、複数の銀行に預金を分けておけばいいものを、絶対に安全と信じる唯一の銀行に信頼のすべてを預けているようなものである。
その銀行が消失したら、氷河自身も破綻する。
瞬は、氷河にとって決して失うことのできない、唯一の人間だった。





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