あの男は、おそらく、氷河が瞬に出会った頃と同じような態度で、瞬に接しているに違いなかった。 任務はもちろんやり遂げたい。 それは、自身に報酬と達成感を与えてくれる。 しかし、やり遂げられなかったら、それはそれで構わないのである。 仕事を一つ失敗したからといって、明日から飢えるというわけでもないのだし、目の前にいる少年は可愛らしく、一風変わっていて興味深い。 人を疑うことを知らない少年は(実は瞬は人を疑いたくないと思っているだけなのだが)、自分に向けられる好意の裏に何かが存在することなど考えてもいないようで、優しくしてやれば素直に喜び、素っ気無くすれば悲しそうな顔をする。 アイザックは、そんな瞬を面白がって、瞬の言うことを何でもきいてやっているだろう。 そして、氷河がそうだったように、やがて瞬のそのまっすぐな瞳に戸惑い始めるに違いない。 なにしろ瞬は、秘密を探ろうとして自分に近付いてきた男に秘密を教えたくて、その男を信じたくてたまらないでいるのだ。 (俺に似ている……?) それは、つまり、アイザックが氷河と同じような行動をとるかもしれないということである。 アイザックが、本来の目的ではない秘密を――瞬の瞳の秘密を――知りたいと思い、瞬に惹かれるということはありえないことだろうか――? 何事にも執着しないということは、執着するものを持っていないということ、執着できるものを求めているということなのである。 |