しゅん王子は不幸でした。


自分を救うために命を懸けてくれた人。
その人のために、何もしてあげられない自分。

それは、しゅん王子が初めて知った“不幸”というものでした。


『しゅんは本当に幸運な子よ。幸福の妖精なんて、そうそう来てくれるものじゃないの。大抵の人間は、妖精にもらった知恵や勇気を使って、幸福になるために努力しなきゃならないのに』

昔、お母様に言われた祝着の言葉が、今のしゅん王子には、まるで刺を持ったイバラの花のように思えるのでした。

幸せって、いったい何でしょう?

苦労をせずに済むこと?
誰かに慈しまれていること?
他人に守られて、安全な場所にいることでしょうか?

その全てが満たされているのに、しゅん王子は不幸でした。
それは、しゅん王子にとっては幸せでも何でもなかったのです。






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