そうして、二人は無事に船に救われて、国に帰ることができました。
大切な幸福の花の鉢を持って。

しゅん王子の身を心配して船で陣頭指揮をとっていたしゅん王子のお兄様は、しゅん王子の無事な姿を見ると、涙を流さんばかりにして喜びました。
しゅん王子の無事の帰還を祈り続けていたお父様とお母様も、国民たちも。

「帰ってきて良かっただろう?」

ひょうがに尋ねられたしゅん王子は、一瞬ためらった後で、小さくこくりと頷きました。
自分がこんなにも大勢の人に愛されていることを、それがどんなに幸福なことなのかを、しゅん王子は初めて知ったのです。

知ることができたのは、しゅん王子が自分を“不幸”だと思う時を経験したからだったかもしれません。
最高の幸福を知るためには、深い悲しみをも知らなければならないものなのかもしれません。
自分を“不幸”だと思うあの時を経験したことが、今のしゅん王子をとても幸せにしてくれていました。



それから、もう一つ、幸せなこと。

あの島を出たら、もうひょうがに抱きしめてもらうことができなくなるのではないかというしゅん王子の心配は無用のものでした。

しゅん王子がお城のお庭に行けば、いつもひょうががそこにいて、二人はいつでも二人きりになれました。
しゅん王子は、毎日花に埋もれながらひょうがに抱きしめてもらうことができたのです。 


幸福の妖精が約束してくれた“最高の幸せ”は、今はすっかりしゅん王子のものでした。


今のしゅん王子は、幸せになる方法を知っていましたから。

そして、ひょうがが、側にいてくれましたから。






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