雨の器
〜 AKITOさんに捧ぐ 〜
画:AKITO様
「あの日も雨が降っていた……」
ほぼ5年ぶりに会った瞬に、氷河はぽつりと呟いた。
髪も服もびしょ濡れで、城戸邸の玄関に突然現れたその男を見ても、瞬は驚いた様子は見せなかった。
「あれは夏の夕立。濡れても凍えるようなものじゃなかったから…」
暗に、6月の雨とは違うのだと、瞬が告げる。
冷たい6月の雨に濡れている男に。
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