星矢を追いかけて校門の前まで来た瞬は、ふと後ろを振り返った。
兄と紫龍を待つためではない。

それが何なのかはわからないが、この場に何かが足りないような気がしたからだった。
振り返れば、その“何か”を見い出せるかもしれないと思ったからだった。

「瞬、どーかしたのか?」
「あ……ううん、何でも」


何かが足りない――。
それは、幼い頃からずっと、瞬の身体にまとわりついていた欠落感だった。

しかし、足りない“それ”が何なのかが、瞬には、高校生になった今でもわからないままだった。
それが何なのかわからないものは、探す術すら見付けられない。

瞬は、だから、時折、こうして後ろを振り返るのだった。
何か大切なものを見逃してしまったような錯覚に捕らわれて――。






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