あれから瞬は、ずっと俺の側にいる。

優しい目をして、
幸福そうな目をして、
心だけを俺に預けて、

俺を見詰めている。


あの時、瞬は生きていたのかもしれない。
そして、俺の獣欲のせいで死んだのかもしれない。

あるいは、やはり死んでいたのかもしれない。
そして、生きていた時とは別の生き方を見つけたのかもしれない。


何もかもが、白い雪笹の群生の見せた幻のようだった。

瞬の身体が生きていたにしても、死んでいたにしても、瞬が生きようとして、何かを求め、もがいていたことだけは確かだ。




俺は、今では、瞬に対して、あの獣のような欲望は覚えなくなった。

望めば瞬はいつでも俺の中に心と身体の中に空気のように入り込んできて、囁く。

「氷河、僕は氷河を愛してるよ」


俺はそれで満ち足りるのだ。

おそらく瞬もそうなのだろうと思うから――。







Fin.








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