聖域にある無意味に時代がかった建物の中は、最新式の設備を備えた宿舎――というよりホテルだった。

建前上88人いる聖闘士のすべてに個室を与えられるだけの部屋数がありながら、青銅聖闘士たちはツインの部屋に二人ずつ押し込められ、白銀聖闘士になってやっとシングル、黄金聖闘士になるとスイートクラスの部屋があてがわれる。
この現代にあって、聖闘士の世界は実に封建的であり、そこには確固とした身分制度が存在していた。


ところで、封建制度とは、君主が家臣の生活を保証し、その代償として絶対的忠誠を求める体制である。

聖闘士は、有事の際には勿論アテナのために敵と闘わなければならないが、平時には何もすることがない。
つまり、何もしなくても食うには困らない、実に優雅な職業だった。
――アテナが破産でもしない限り――。

聖闘士になるためには相応の修行を積まねばならず、修行を積んだからと言って必ずしも聖闘士になれるわけではないのだが、うまくすれば一生遊んで暮らせるかもしれないというので、聖闘士になりたいと望む青少年は数多くいた。

そういう数万、数十万の聖闘士志望者の中で、見事聖闘士になりおおせた者たちは、当然のごとく腕っぷしが強く、根性があり、そして享楽的だった。






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