「まあ、そんなことよりだ。さっきの有り様を見た限りでは、瞬が聖闘士で、氷河とデキてるってことが知れると、何かと厄介なことになりそうだぞ。一応、善後策を考えておいた方がよくないか?」

“軽蔑”と“娯楽”は、比較するにはあまりにも属性が違うほどに別物である。
氷河を軽蔑しているからと言って、氷河で遊ぶことを厭うほど狭量でもない星矢が、すぐに紫龍の提案に乗ってくる。
「おまえらのこと知ってるのは、俺と紫龍の二人だけかー?」

「いや。一輝も、だな」

紫龍のその言葉に、瞬は少し驚いたような顔になった。
「え? 兄さんにバレてるの?」
ギリシャの地中海性気候にあてられたのか、瞬はいたって呑気である。

「バレないはずがなかろう」
「そっか……。氷河、気をつけてね」

「…………」


本当に、瞬は――瞬だけは――呑気だった。






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