![]() ![]() とある大きな川のほとりに、大きな花と小さな花が並んで咲いていました。 川の両岸にある広い野原で、咲いている花はその2つだけ。 大きな花は、大輪の青い花で、 小さな花は、精一杯花びらを広げても花の大きさが1センチにも満たない薄紅色のコハコベの花でした。 大きな花は、小さな花に恋をしていました。 小さな花は可愛くて可憐で、とても優しい色の花でしたから。 大きな花は、風が吹くと、自分自身を楯にして小さな花を庇いました。 陽射しが強すぎる時には、濃い緑の葉で小さな花にそっと影を作ってやりました。 大きな花は何も言いませんでしたが、小さな花は大きな花の親切に気付いていて、やっぱり大きな花にほのかな恋心を抱いていました。 けれど、小さな花は自分の小さな恋を大きな花に告げることができませんでした。 大きな花は、とても美しくて立派な花でした。 そして、小さな花は、自分をとてもみすぼらしい花だと思っていたのです。 小さな花は無力でした。 大きな花に何をしてあげることもできませんでした。 小さな花は自分の無力がもどかしくて、いつも泣いていたのです。 大きな花も、小さな花に恋を打ち明けることができませんでした。 小さな花は内気すぎて、小さすぎて、『好きだ』なんて言われたら、恥ずかしがってその花びらを閉じてしまうかもしれません。 ですから、ふたりは、もうずっと長いこと、黙って並んで咲いていました。 雨の日も風の日も互いを思い、けれど何も言わずに、ただ心だけを焦がしていたのです。 |
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