大きな花が死んでしまってから、幾日かが経ったある夏の朝のこと。


『ずっとずっと言えなかったけど……』

小さな花の上で、人間の声がしました。
それは、初めての恋が恥ずかしくて、他の人間の目を逃れて、誰もいない野原にやってきた幼い人間の恋人たちでした。

『俺はずっとずっとおまえが好きだった』

『氷河……』

恥ずかしそうに目を伏せた小さな人間を、少し大きい人間はそっと抱きしめて、花びらに触れるようなキスをしました。


幸せな幼い恋人たち――。

実ったばかりの恋に胸を震わせている恋人たちの、幸せに輝く微笑みを見て、小さな花は新しい涙を零しました。
暖かい涙でした。



「僕がもう一度、大きな花さんに出会えたなら、僕は大きな花さんに、大好きだって打ち明ける。どんなに僕が小さくても、どんなに僕がみすぼらしくても、必ず必ず打ち明ける。そして、僕は大きな花さんにたくさんたくさん笑顔を見せてあげるんだ」


固く固く決意して、小さな花は、大きな花を待つために、顔を空に向けたのです。



Fin.