「瞬、おっはよー。なんだ、氷河、今日も瞬と一緒に登校かよ」
「おはよう、瞬。まるで幼稚園児の送り迎えだな」
「あ、おはよ、星矢、紫龍」

「…………」
氷河は、ほんの短い間だけとは言え、同じ施設で起居を共にした幼馴染みたちの親しげな態度にも、目一杯不愉快そうな顔になる。
まるで、自分と瞬の間に割り込んでくる不審人物を排斥したいとでも考えているかのようだった。


瞬はそれを、自分の母親以外の人間を警戒する子供の反応のようなものだと思っていた。そんなふうでいては、いつまで経っても氷河には自分以外の友人ができないのではないかと、瞬は氷河のその態度を心配してもいた。

だが、そんな心配とは全く別のところに、氷河が自分にだけ心を開いてくれていることを嬉しく感じる部分が、瞬にはあったのである。
それは、瞬自身にも理由のわからない――理に適っていないと思える――不可解な感情だった。


「氷河、そういう態度ってよくないよ。氷河には僕以外にもたくさん友達が必要だと思う」
「俺はおまえ以外いらない」
「氷河……」

憂慮と安堵が交錯する。  

瞬の困惑の表情には、ほんの微かにではあったが、喜悦の色が混じっていた。


瞬のそんな様子を、星矢と紫龍は、氷河を気にかける瞬以上に危惧の念を抱いて見やった。


“事実”は、瞬の認識とは、実はかなり違っていたのである。






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