「おまえは極端すぎるんだよ。それだけのことで、転校までするか、フツー」 瞬との出会いを『それだけのこと』と評されて、氷河はぴくりとこめかみを引きつらせた。 「それにしては実にまっとうな――いや、全然まっとうなやり方ではないが、色々と小細工をするじゃないか。自信家のおまえのことだから、転校してきたその日のうちに瞬に告白くらいするのかと思っていたぞ、俺は」 氷河の攻撃から星矢を守るために、紫龍がさりげなく話を逸らす。 「狂熱タイプじゃないからな、瞬は。瞬は、どちらかという、穏やかに時間をかけて信頼を培っていくことの方を好むタイプだ」 星矢の言葉への不快を忘れたわけでもないのだろうが、氷河は紫龍の話に乗ってきた。 そちらの話題の方が、彼には楽しいものだったのだろう。 「だからって、登校拒否の振りなんかまでするのは策を巡らし過ぎじゃないか」 「困ったちゃんでないと、瞬が俺を見てくれないからな」 氷河には、瞬を騙しているという罪の意識は全くないようだった。 彼は、しれっとした顔であっさりとそう言った。 「俺は瞬の力で更生する。そして、瞬以外の誰をも拒否して生きていく。瞬は心配で俺から目を離せなくなる。瞬は最後まで俺を見捨てない。そういう子だから、俺は瞬を――」 「――まあ、こういう奴なんだよ、瞬。こいつは」 これまで何をどう非難されようが平気な顔でやり返していた氷河は、星矢のその言葉に、初めて顔色を変えた。 |