次に施設内から消えたのは星矢だった。

「ほら、やっぱり。きっと、調子の良くない実験モデルを実験から排除してるだけなんだよ」
多少の無理はあるものの、明るい方向に考えようとする瞬に、しかし、紫龍は同調してこなかった。

「氷河に都合の悪い奴だけが消えていくな。案外犯人は内部にいるんじゃないのか。『そして誰もいなくなった』だ」
「紫龍。犯人だなんて、そういう冗談はやめてよ。閉じ込められてて、紫龍までおかしくなっちゃったの」

瞬の不安をよそに、氷河は平気で紫龍の悪乗りに同乗する。

「あれの犯人は、死んだと思われていた男だったが」
「む……そのパターンもありか」

「氷河も紫龍も馬鹿なこと言うのはやめて! きっと今頃星矢は、本物の空を見て一息ついているんだよ!」

不安よりも怒りの勝った瞬の叱咤に、紫龍が大仰に肩をすくめてみせる。


その紫龍がいなくなったのは、その翌日のことだった。






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