無事だ。

だが、先の戦いでの敗北で、俺は俺の過ちを知った。
多くの領民や臣下の命を奪ったことを、今は後悔している。

おまえや臣下たちの諫言を聞き入れて、民にもっと慈悲をもって接していたら、領民に裏切られて己れの地位を失うこともなかっただろう。

殺さなければ殺される。
世の中というものはそういうものだと、己れのしていることは当然のことなのだと、俺は信じていた。


俺は、俗世を捨てて、悔恨の道に入ろうと思う。

おまえには、兄のことは忘れて欲しい。
兄など最初からいなかったものとして、おまえ自身の幸福を掴み取ってくれ。

俺が今願うのはそれだけだ。


1262.8.19   おまえの兄






【dopo】