夕べ、一晩考えました。 僕がこの屋敷に来てから、あなたが僕の許にいらしてくださらない初めての夜でした。 あなたにお会いするのも、その身体に組み敷かれるのも恐かった。 どうすればいいのかが、自分でもわからなかった。 あなたが、僕の気持ちを慮っていらしてくださらないのだということはわかっていても、一人で過ごす夜は恐かった。 眠ってもいないのに、煉獄で苦しむ兄の姿を幾度も見たような気がします。 僕は、兄の最期の手紙と、あなたからいただいた幾通もの手紙を何度も何度も読み返しました。 あなたの演じてくださった兄が、僕の本当の兄の姿だったのだと、僕は思いたい。 生まれた時代が悪かったのです。 殺さなければ殺される、裏切らなければ裏切られる――そんな時代の中で、兄は、自分と自分の領地と地位と、そして僕を守るために、あんなにも残虐になった。 そう思えてきました。 あの最期の血文字の手紙こそが、兄の真実だったのだと。 そんな時代と世界の中で、敵である僕を慈しんでくださったあなたの勇気と強さに感謝します。 そんな時代でも、人は人を愛することができるのだと、あなたは僕に教えてくださいました。 フォルトナート。 僕は、あなたと共に生きていきます。 エッツェリーノ・ダ・ロマーノの弟にして
永遠にあなたのアンジェロ |
Finito |