氷河の全身を、すさまじいほどの気迫が包んでいた。 「ふん、雑魚が」 城戸邸を襲ってきたドクラテスを、2秒とかけずに大地にひれ伏せさせて、吐き出すように氷河は言った。 (この俺を雑魚だと……!) 半ば以上地面にめり込んでしまっているドクラテスは、氷河のその言葉に文句を言いたげだったが、実際、雑魚と大差なくあしらわれてしまった身としては、歯ぎしりをすることしかできない。 総身に知恵がまわりかねる大男も、その程度の判断力は有しているようだった。 「あれ、もう倒しちまったのかよ?」 遅ればせながら登場した熱血主人公がつまらなさそうに尋ねてくるのに、瞬は、 「うん、あっと言う間だった」 と、両肩をすくめて答えた。 「ふーん。聖域の刺客とか言ったって、大したことねーのな」 その時には、星矢も、氷河の“強さ”を不思議には思わなかったのである。 |