しかし、それからも、氷河は、城戸沙織を弑するために聖域から送り込まれてくる聖闘士たちを次から次へと倒し続けた。
それも、まるで、星矢たちの活躍の場(?)を横から奪い取るようにして。

勝負はいつも、ものの数秒とかからなかった。
それは、瞬の兄がアテナの側の聖闘士として戦線に復帰してから、ますます凄まじさを増していき、一輝が仲間たちの許を再び去っていった後も変わらなかった。



「氷河って、あんなに強かったっけ?」
星矢が引っかかっているのは、本当はそんなことではなかった。

「弱くはなかったけど……」
答える瞬も、どこか戸惑いがちだった――否、不安そうだった。

彼等が気になっているのは、氷河が強いかどうかということではなく、最近の彼が身体にまとわせている雰囲気の異様さ、だったのだ。

「この頃の氷河、殺気の塊りだよな」

「うん。なんだか、触れただけで切れちゃいそうで――」
瞬は、敵を見る時の氷河の、蔑むように鋭い視線が、恐くなることすらあったのだ。



氷河が城戸邸のラウンジに入ってきたのは、瞬がその先の言葉を見つけ出せずに俯いてしまった時だった。






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