瞬は、『初めてか』と訊くのもためらわれるほど緊張して、身構えていた。 唇を噛みしめるように結び、瞼を固く閉じ、両の拳を握りしめて、“気をつけ”の姿勢でベッドに仰臥している様は、ほとんど手術台に乗せられた患者のそれだった。 「……やはり、やめておこう、瞬」 瞬は言葉の上だけでなく、本気で自分を受け入れようとしている。 氷河は、それを確かめられことだけで満足しようと思えば満足できないこともなかった。 二度と還れぬ死出の旅に出る覚悟を決めているような者を犯したところで、後味の悪い思いをするだけである。 が、この決死の覚悟の特攻隊員は、氷河のその言葉を聞くと、ぱちりと目を開けて身体を起こし、眉をつりあげて、意気地のない同輩に噛みついてきた。 「こ…ここでやめられるくらいなら、最初から、そんな気持ち持たないで!」 怒りのためか、羞恥のせいなのか、瞬の頬は薄紅色に上気している。 「しかしだな、瞬……」 自分の覚悟を無にするなと責めているような瞬の大きな瞳に出会って、氷河は吐息した。 この健気で可愛い生き物の身に着けているものを全て剥ぎ取り、自分の下で喘がせてみたいだの、泣かせてみたいだの、そんな気持ちを抱く方がどうかしている。 そんな欲に捕らわれていた自分が愚かだったのだと自嘲した途端に、氷河のその欲は高まった。 素直で健気で可愛いからこそ憎く、汚したかったのだ、氷河は。 氷河は瞬を見詰めた――ほとんど睨んでいた。 「本当に、知らないぞ、どうなっても」 喉の奥が渇き、氷河の声は掠れた。 |