氷河の指がそこに触れた途端、瞬はびくりと大きく身体を震わせた。

「反応するんだな、おまえでも」
意外ではあったが、それは氷河を安心させもした。

「ぼ…僕を石か何かだと思っていたの」
意地を張った瞬の声は、羞恥に潤んでいる。

緊張のせいで、瞬の呼吸は既に胸を上下させるほどに荒ぶっていた。
これは、どう見ても人間の身体の活動である。
瞬は人間なのだという気持ちが、氷河の口許に笑みを刻ませた。

「見せてみろ、おまえ」
「え?」

氷河は何を言っているのかと瞬が訝り始めた時には、氷河の手際の良い手が、瞬の身に着けていたものをすべて取り除いてしまっていた。
白いシャツブラウス1枚だけを残して。

「え…… !? 」
まさか、そんなふうに着衣を奪われることになろうとは、瞬は思ってもいなかった。

自分が下肢だけを外気にさらされているというその状況に、瞬は混乱を覚えていた。
が、この手のことにセオリーなど認めていない氷河は、瞬の戸惑いを消し去ってやることよりも、瞬を観察することの方に熱心だった。

「何だ、本当に普通の人間なんだな、おまえ。随分可愛らしいが」
「……!」

揶揄されているとしか思えない氷河のその言葉にも、瞬は何も言い返すことができなかった。

瞬のセオリーでは、それはキスから始まるものだった。
なんとなく、そういうものなのだろうと、瞬は思い込んでいたのである。

そんな瞬に、混乱して今にも泣きそうになっている自分の瞳が氷河の加虐性を刺激していることなど、わかろうはずもない。

しかし、事実はそうだった。
瞬がまるで子供なことが、氷河の情欲を煽り立てていた。

それは、一刻も早く、瞬がまだ何も知らないうちに、瞬を自分のものにしてしまいたいという、独占欲を内包した猛々しい焦りだった。


「瞬、すまん、先におまえをくれ」
氷河の右手が、瞬の左の足首を掴む。

「あ…え?」
瞬は、羞恥のせいでぼやけて見える視界に視点を合わせようと、瞬きをした。
その時には既に氷河が、その片方の手だけで、瞬を自分の前に開かせてしまっていた。

そして、
「おまえを早く俺のものにしたい。我慢できない」
そう言い終えるより先に、氷河は瞬を貫いていた。






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