投票は締め切られました。 そして、不正が行われないようにとの配慮で10台もの監視カメラが設置された体育館で、即日開票が行われたのです。 同数の票の山がテーブルの上に築かれ、最後の1票。 その1票を手にした選挙管理委員会の委員は、判断に迷って、管理委員会会長である校長先生のところに、その1票を持っていきました。 もちろん、それはロシアのお友達の投じた1票でした。 そこには、超々々へったくそな文字で、 『瞬、だれよりも だれよりも きみを あいす ひょうが』 と綴られていたのです。 「…………」 校長先生は、その票を見て、うーんと唸ってしまいました. 投票の形式にはのっとっていませんでしたが、その票の意図するところはよくわかります。 しかし、普通なら、これはどう考えても無効票。 校長先生の苦悩の様子を見ていたマーマは、カミュ先生への投票用紙を1枚掴みあげて、少々興奮気味に叫びました。 「その票が無効なら、これだって無効です! これはどう見ても『カミュ先生』じゃなく、『カシュ先生』だわ!」 「ロシアのお友達のお母さん。そんな無茶は言わないで」 校長先生は、マーマを落ち着かせようと、穏やかな口調です。 「よろしい。選挙の結果を発表します」 みんなは一斉に校長先生に注目しました。 ロシアのお友達も、瞬ちゃんも、マーマも、カミュ先生も、1年生のお友達も、2年生のお友達も、3年生のお友達も、4年生のお友達も、5年生のお友達も、6年生のお友達も、PTA婦人会のお母さん方も、給食のおばちゃんも。 誰もが、固唾を飲んで、続く校長先生の言葉を待ったのです。 |