マーマは、
『ここまで事の結末を引っ張っておいて、そんな落ちは許されない!』
と、校長先生に文句を言おうとしました。

けれど、ロシアのお友達はそんなマーマを止めたのです。
「いいんだ、マーマ。自分の名前を漢字で書けなかった俺が悪い」
「氷河……」

「俺は今日から一生懸命勉強して、すぐに2年生に進級してみせる」

「氷河……。なんて偉いの……」
マーマは、我が子の前向きな姿勢に大感動です。
恋は、ロシアのお友達を随分と大人にしたようでした。

「それに……」
ロシアのお友達は、泣きそうな顔の瞬ちゃんの手を握りしめて言いました。
「1年生と2年生の教室は同じ校舎にあるし、ミロ先生はカミュより間抜けそうだ」

「氷河、なんて冷静で大人な判断なの!」
我が子の抜け目のなさに、マーマは大感心です。
恋は、ロシアのお友達を随分とお利口にもしたようでした。


それから、ロシアのお友達は、瞬ちゃんに向かって言いました。
それはそれは真剣な眼差しで。

「瞬、俺を愛してくれているのなら、俺が2年生にあがる時まで待っていてくれ」

瞬ちゃんの瞳は、熱い感動の涙で潤んでいます。
「氷河……。僕、いつまでだって待ってるよ!」

「……ありがとう、瞬」


愛は、人の心を強く豊かにします。
子供でも、大人でも、それは同じなのです。


この感動的な結末に、全校生徒は全員涙を流していました。
マーマも泣いていました。
瞬ちゃんも泣いていました。

その場で泣いていないのは、落ちのくだらなさにムカついているカミュ先生と、明日からの苦労を想像して泣くに泣けないミロ先生だけでした。






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