小学校も高学年になってくると、成長の早い子はすっかり大人びてきます。 ロシアのお友達は大変早熟でしたから、変声期も他の子より早く訪れました。 がらがらになってしまったロシアのお友達の声を聞いた時、瞬ちゃんはとってもとっても心配しました。 「氷河、大丈夫? 風邪ひいちゃったの?」 思うように声を出せないロシアのお友達は、ぶんぶん首を横に振って、そうではないことを瞬ちゃんに伝えようとしました。 けれど、瞬ちゃんの心配と不安は収まりません。 「熱とかないの?」 「…………〜っっ♪♪ !! 」 おでことおでこで熱を計る瞬ちゃんと、瞬ちゃんのその優しさに感激している我が子の様子を微笑ましげに見詰めていたマーマが、声の出ないロシアのお友達に代わって、瞬ちゃんに教えてくれました。 「瞬ちゃん、これはね、声変わりって言って、氷河が大人になってきたっていう証拠なのよ。病気なんかじゃないの」 「大人に?」 「そうよ。例えばね、もしカミュ先生が瞬ちゃんと同じような声でお話してたら、ちょっとヘンな感じがするでしょ」 「は…はい……」 瞬ちゃんは、自分と同じ声でロシアのお友達を怒鳴りつけているカミュ先生を想像してみました。 そして、自分の想像に絶句しました。 「…………」 ロシアのお友達も瞬ちゃんと同じ想像をして、とても嫌な気持ちになりました。 「大人になるってね、色んな面で子供の時と変っていくことなの。瞬ちゃんもあと2年くらいしたら、もっと背も高くなって大人っぽくなるかな?」 「ほんと?」 「…………」 ロシアのお友達は、今より背が高くなって大人っぽくなった瞬ちゃんを想像して、やっぱり、なんとなく嫌な気持ちになったのでした。 |