恒例  その夜の、母と子の愛の進捗ミーティング 議事録



「氷河、今度も痛かったでしょ」

ロシアのお友達はマーマに頷き返しはしましたが、決して泣き言など口にはしません。

「困ったわねぇ。瞬ちゃんにちゃんと教えてあげないといけないわね」

もちろん、瞬ちゃんを非難するようなことも言いません。

「これは病気じゃないんだってことを、早くわかってもらわないと――」
「こっちのまで抜かれる……」
「そうねぇ。左脇の方は、けっこう数があるから辛いわよね……」


進捗ミーティングに入る前に落ちを知らされていたマーマは、二重に気落ちしていました。
今度こそ、今度こそ、むにゃむにゃのケだと期待(?)しすぎたせいもあったでしょうが、、いくら形状が似ているからといって、腋毛とむにゃむにゃのケを混同してしまうなんて!
マーマは少々、いえ、とってもがっかりしていました。
けれど、マーマはオトナですから、自分の落胆をロシアのお友達には悟らせません。

オトナへの階段を登り始めたロシアのお友達は、それでなくても解決の難しい問題に直面して、苦悩しまくっているのです。
そっちの問題を解決することの方が先決です。


瞬ちゃんが、ロシアのお友達の身体の変化を理解しない限り、ロシアのお友達に生えてくるけけけのけは全て、瞬ちゃんに抜かれる運命を辿ることになります。

けれど、そのことを瞬ちゃんに理解してもらうのは、至難の業でしょう。
瞬ちゃんには、そんなものは一生生えてこないのですから(きっぱり)。

ですから、ロシアのお友達のけけけのけ問題は、瞬ちゃんには一生理解してもらえないのです。

オトナになってからも、瞬ちゃんは、
「氷河のこの病気って、不治の病なのかなぁ?」
と言いながら、毎晩眠る前にぷちんぷちんとロシアのお友達の無駄毛を抜くことになるのでしょう。

たまに、堂々とけけけのけを人目にさらしているスポーツ選手を見ることがあったとしても、彼等はロシアのお友達と同じ(男性に多発する)病気なのだと思うだけなのでしょう。


変なのは自分の方だということを、瞬ちゃんが理解することはないのです。
だって、変わってしまったのは、ロシアのお友達の方なのですから。






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