さて、集合場所の校庭には、瞬ちゃんやロシアのお友達と同じように浮かれた生徒たちがたくさんいました。 「さあ、2年生はこっちに並んで〜! そろそろ出発するぞー」 引率のアルビオレ先生が大声でみんなを呼んだので、瞬ちゃんとロシアのお友達は、急いでアルビオレ先生のいる方に駆けていこうとしました。 ところが。 「貴様、3年生のくせにどこにいくつもりだ、氷河」 そう言って、ロシアのお友達の襟首を掴みあげたのは、クールで厳しいので有名な3年1組の担任のカミュ先生です。 襟首を掴みあげられたロシアのお友達は、空中で足をじたばたさせました。 「3年生は、2年生とは逆方向の白クマ動物園に行って、動物の飼育の見学をするんだ。こっちへ来い」 「氷河…っっ!」 瞬ちゃんが、空中に浮かんでいるロシアのお友達を見上げると、カミュ先生は言いました。 「2年生はもう出発だ。君は早く自分のクラスの列に並びなさい」 「そんな……」 遠足が楽しいのは大好きなお友達と一緒に、いつもと違う場所に行けるからです。 ロシアのお友達と離れて、そんなところに行ったって、ちっとも楽しくないに決まっています。 瞬ちゃんは、泣きそうな顔になりました。 それを見たロシアのお友達は、足をじたばたさせながら、ぎゅっと唇を噛みしめました。 瞬ちゃんを泣かせるなんて、それが先生だろーが、坊さんだろーが許せるものではありません。 カミュ先生に襟首を掴まれていたロシアのお友達は、ぶらぶらと身体を揺らして勢いをつけ、逆上がりの要領で身体を一回転させると、カミュ先生の脳天を蹴飛ばして、カミュ先生の背後の地面にしゅたっ☆ と着地しました。 「瞬! こっちだ!」 「氷河っ!」 そして、2人は、愛し合う恋人たちを引き裂こうとする鬼のようなカミュ先生から、手に手をとって逃げ出したのです。 2年生が並んでいるのとは逆の方向──つまりは校舎の中へ。 誰もいない校舎の、入ったこともない6年生の教室のロッカーの陰に、2人は息をひそめて隠れました。 |