ところで、ロシアのお友達が己が身を犠牲にして見つけた小人さんの彫刻は、それはそれは可愛らしいものでした。
瞬ちゃんは、人差し指大の小人さん彫刻をしみじみ眺めて、すっかりうっとりです。

「可愛い彫刻だね」
「欲しいか?」
「もし、もらえたら嬉しいな」
「よし」
「わ〜っ、何してるの〜っっ !? 」

ロシアのお友達は、愛する瞬ちゃんのためなら、器物損壊・占有離脱物横領も何のその。
大きな木の根元にちょこんと立っている小人さんの彫刻を、力任せに引っ張り出そうとし始めたのです。

けれど、実は、この小人さん彫刻はちゃんと盗難防止のための用心がされていて、地中に埋まっている土台部分の重さは、優に1トンにも及んでいたのです。
それは、到底人力では引っ張り出すことのできないものでした。

「氷河、もういいよ。ちょっとだけ欲しいなって思っただけなの。僕たちがこれを持っていっちゃったら、後から来る人たちが困るもん。お人形はスタンプを集めたらもらえるんだし。ね、氷河」

「瞬がそう言うなら……」
瞬ちゃんの言葉に、ロシアのお友達はしぶしぶ小人さん彫刻を掴んでいた手を離しました。
本当は、ロシアのお友達は、瞬ちゃん以外の人が泣こうが怒ろうがどうでもいいことだと思っていたんですけどね。

「氷河は僕のためにがんばってくれたんだよね。ありがとう。彫刻もらうより氷河の気持ちの方が、僕、嬉しい」

そういって笑う瞬ちゃんの可愛らしいこと!
瞬ちゃんの笑顔の為ならどんなことでもがんばろう! と決意も新たに心に誓うロシアのお友達なのでした。






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