さて、二人がお風呂場を出ると、そこには2階に続く大きな階段がありました。 「氷河、階段のぼれる? ぶつけたとこ、痛む? 2階を見るのはやめようか?」 瞬ちゃんに心配そうに尋ねられたロシアのお友達は、 「大丈夫だ」 と、瞬ちゃんに言いました。 瞬ちゃんが、お城の中を全部見たがっているのはわかっていましたし、もしかしたら2階にも小人さんの彫刻があるかもしれません。 どんなに腰が痛くても、瞬ちゃんのために、ロシアのお友達は2階にいかなければなりませんでした。 それが男というものです。 男の中の男であるロシアのお友達は、腰の痛みなんか感じてないみたいな顔を作り、心配顔の瞬ちゃんの手を引いて、階段をのぼりかけました。 その時。 「あれ?」 「どうした」 「今、階段の手摺りを何かが滑っていった」 「虫?」 「ううん、そんな感じじゃなかったよ」 瞬ちゃんはそう言って、階段の真ん中へんまで駆け上がって行きました。 「このへんから、すすすすすーってね、下の方に向かって――わっ!」 何と言うことでしょう! 瞬ちゃんは、お約束通り、階段に蹴つまづいて、階段の中程からロシアのお友達のいる方に向かって落下態勢。 もちろん、ロシアのお友達は身を呈して、瞬ちゃんの下敷きになりました。 「氷河っ! 氷河、大丈夫っ!?」 ロシアのお友達のおかげで、怪我ひとつせずに済んだ瞬ちゃんは、半分死んでいるみたいなロシアのお友達の名前を泣きながら呼びました。 「瞬、ここ」 「え? ここが痛いのっ !? 」 ――のはずがありません。 ロシアのお友達が指差したのは、階段のいちばん下の段の壁際に、かくれんぼをしているみたいにしゃがみこんでいる4人目の小人さんでした。 「わあっ! 4人目の小人さんだっ!」 瞬ちゃんの笑顔は、ロシアのお友達の効果抜群の湿布薬です。 4つめのスタンプを手に入れた瞬ちゃんとロシアのお友達は、またしても辺りに散らばってしまったおやつを拾い集めて、にっこり顔を見合わせました。 本当は、ロシアのお友達は、かなり肩が痛かったのです。 でも、ロシアのお友達は、瞬ちゃんに、そんな素振りをかけらも見せませんでした。 すっ転び、顔で地面を掘り、腰を打って、肩は痛んで、ロシアのお友達の顔や手足は、すり傷・きり傷・打ち身だらけ。 それでも。 ロシアのお友達は、それでも、瞬ちゃんのために平気そうな顔をするのです。 ロシアのお友達は、真の男でした。 |