一晩、涙もなく泣いたシュンは、翌朝には、一見、すべてが吹っ切れたような顔をしているように見えた。
もちろん、ヒョウガには、それが、昨日は黒く見えた魔の山が朝の光を受けて白く輝いて見えるような――錯覚にすぎないことはわかっていたが。


「山超えは2日ほどの行程になります。天候によっては1日2日延びるかもしれません」 

シュンが、差し出されたヒョウガの手に足を掛けて、馬に騎乗する。
「父の望みが、僕の生なら、僕は前を見るしかありません」

そう言って、シュンは自分の騎士と共に、魔の力に満ちた魔の山に入ったのである。






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