「公子……」 ヒョウガ自身の言葉と、ヒョウガ自身の眼差し。 「あ……」 「公子、なぜこんな……」 命を懸けて拒絶するるほどに、自身を汚されることが耐えられなかったのかと問おうとするヒョウガの瞳を、シュンが確かめるように凝視する。 「ヒョウガ……」 手が自由になる。 「ああ…っ!」 それがわかった途端に、シュンはヒョウガにしがみついていた。 細い腕を必死にヒョウガの背にまわし、そして、耐え切れなくなってる身体をヒョウガに押し付け、激しく揺さぶった。 鼓動が異様なほど速く、胸が大きく上下している。 もう、羞恥も意地もプライドもなかった。 あったにしても、勝手に蠢く腰は、そんなものではどうにもならない。 「ヒョウ…ガ、苦しいの、助けて……! 僕、もう、どうしていいかわからない。ヒョウガなら知ってるでしょ。僕を助けて。楽にして。苦しいの……!」 「公……シュン……」 耐え切れない状態になっているのはシュンだけではなかった。 ヒョウガ自身も、自分の許に戻ってきたはずの自分の身体を、その意思で律することはできなかったのだ。 まして、シュンにそれを求められてしまっては。 耐えるための理由もない。 そのまま、求められるままに、シュンの内奥を刺し貫く。 シュンは声を抑えようともせず、歓喜の叫びをあげ、それはすぐに、嗚咽にも似た、間断ない喘ぎに変わっていった。 魔の山の洞窟に、シュンの吐息とヒョウガの荒い息が満ちる。 シュンを侵し、同時にシュンに飲み込まれようとしているそれは、ヒョウガ自身のはずだった。 少なくとも、もうアフロディーテの支配は受けていないヒョウガのはずだった。 だが、それは、シュンの知っているヒョウガでもなかった。 冷たい氷ではなく、燃えるように熱いもの。 それが幾度もシュンの中に入ってくる。 そのたびにシュンは息を詰まらせ、吐き出し、そして、もはや声にもならない歓喜の声をあげ続けた。 ヒョウガは、シュンを、あの妙な触手の蠢きなどより、はるかに激しく乱し狂わせた。 |