瞬が向かった先は、過ぎる秋どころか昨年の冬のままでいるような氷河の部屋だった。


「氷河」
「何か用か」

それまで、無為に秋の庭を眺めていたようだった氷河の眼差しが険しくなる。
彼を緊張させているのが自分なのだということを、瞬は自覚していた。

「少しは熟れてきたかなと思って、確かめに来たんだ」
「何が」
「氷河が」

「…………」

瞬の言葉の意味がわからなかったのだろう。
わからないことが、氷河の表情を強張らせたようだった。

「相変わらず、硬いね」

瞬は、そう言いながら、氷河の瞳を覗き込んだ。
やわらかい秋の陽射しの中で見るそれは、青くも黒くもなく――今は、戸惑いの色をたたえていた。






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