「少しは刺激になったかな。ほんとに頑固なんだか、鈍感なんだか、あのお陽様は」 瞬が、今年最後の秋の味覚の許に戻ってくると、そこでは、星矢が口中で葡萄の種と格闘していた。 格闘を中断するでもなく、口をもごもごと動かしながら、星矢が瞬に尋ねてくる。 「瞬、おまえさー、さっきから、なに訳のわかんないこと言ってるんだ? どこ行ってたんだよ」 「来年の秋のために――ううん、再来年かな――種を撒いてきたの」 「種?」 自分の手の平にぷぷぷぷぷと吐き出した葡萄の種を、星矢は奇妙な顔で見やった。 「結果の出る時がわからないっていうのはじれったいけど……生きているのって、大抵はそんなことの連続なのかもしれないね。これって、敵を倒す闘いと、敵のない戦いの違いなのかな」 「……??」 星矢にとっても、瞬は――瞬の言動は――氷河とは全く別の意味合いで、謎だった。 だが、星矢には、それは、どうしても解きたい謎ではなかったのである。 まだ青く硬いままの果実は、先に秋という季節を迎えてしまった仲間を理解するのを諦めて、再び目の前にある秋の味覚に挑み始めた。 |