その顎を右の手ですくい取って、氷河は、やっと自分の本当の罪を告白した瞬の顔を上向かせ、尋ねた。

「瞬。おまえ、俺が好きか」
「…………」

瞼を伏せる瞬に、返答を促す。
「瞬」

「僕、そんなこと言う権利もなくなったの」
自分の本当の罪のささやかさに、むしろ卑しさを感じてしまったようで、瞬の声は泣き声じみてきていた。

「じゃあ、言わなくていい。頷くだけで」

氷河の声と表情から険しさが消えていることに力づけられたのか、それでも、恐る恐る、瞬がこくりと頷いてみせる。
それさえ確かめられれば、氷河は他に知りたいことなどなかった。

「とんだ防護服だ」

薄い苦笑を浮かべて、氷河は、パジャマの襟元を押さえている瞬の手を、取りのけた。

「脱がせるぞ」
「氷河」
「こんなくだらないことで、できなくなったんじゃたまらん」
「き……気持ち悪くないの?」

答える代わりに、氷河は瞬の心臓の上に唇を押し付けた。

「……っ!」
「1ヵ月……いや、2ヶ月以上か。ずっと清らかな生活をしてたからな、覚悟しろ」
「あ…あの……わっ…!」

瞬の腿を片手で掴みあげて、氷河は、もう一度瞬の身体をベッドに引き倒した。
今度こそ瞬に否やを言わせないために、最初から瞬の身体の中心に手を伸ばす。

瞬の身体の変化は早かった。

「ったく、こんなパジャマのせいで……!」

取り除いたパジャマを、氷河が、腹立たしげに、ベッドの下に投げ捨てる。
「おまえも我慢は身体によくないぞ」

あっという間に、氷河を受け入れられる状態になってしまった瞬をからかうように、瞬を変えた張本人が忠告する。

「氷河……!」

瞬に、その忠告は、既に無用のものだったが。

「氷河…っ!」

瞬の身体は、熱を帯び、潤み、焦れていた。

それでも、自分が何を欲しているのか、瞬は決して口にはしない。
以前と同じように、喘ぎと早い鼓動と腰を蠢かすことでそれをせがむ瞬に、氷河はすぐに求められているものを与えてやった。
その瞬間に息を飲んだ瞬の喘ぎは、やがてまた小刻みに荒く激しくなる。

自分の身体の内を奥深くまで侵している男の名を、瞬は繰り返し呼んでいた。

だから、氷河も瞬に繰り返し言ってやったのである。
「おまえの心は知らないが、おまえの身体は――この手も脚も心臓も全部俺だけのものだ。おまえのものでもない。今は俺のものだ。俺は誰にも渡さん」

そんな、考えようによっては理不尽な言葉を素直に受け入れてしまえるような時間が、瞬には必要なのかもしれなかった。

氷河に突き上げられるたびに大きくなる喘ぎに混じって、瞬が身悶えるように訴えてくる。

「氷河……! 氷河も僕のものだ。僕だけのもの……ああっ!」
「わかってるじゃないか」

「氷河は僕だけのものなんだから、他の誰かにこんなことしちゃ駄目…!」

瞬は自分が何を言っているのか理解しているのだろうかと、氷河は苦笑した。

そんなことはしないと答える代わりに、氷河は、瞬が悲鳴をあげることもできないほど荒々しく瞬の身体を貫いてやった。






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