それから、1週間、俺は城戸邸の自分の部屋にずっと閉じこもっていた。

人間はいつかは死ぬ。
人の死は、いつ訪れるかわからないものだ。
そんなことは知っている。

だが、なぜ瞬が?
どうして、瞬が死ななければならないのだろう。


苦痛を軽減させるために麻薬を用い、死を待つだけの穏やかな日々。
そんな生活を、瞬は潔しとするだろうか。
苦痛が無い代わりに、薬に蝕まれて、瞬の身体はぼろぼろになるのだろう。
病ではなく、薬のために瞬の身体は死を迎えるのだ。

いつも生きることだけを考えていた瞬が、そんな生と死を望むだろうか。


かと言って。


いつ終わるのかもわからない、生とも死ともつかない長い時間を、瞬が喜んで受け入れるとも思えない。
だいいち、そんなことになったら、もしかしたら、俺はこの先一生涯、瞬と言葉を交わすこともできないかもしれないんだ。

毎日毎日、瞬の眠っている顔だけを見て、終わりの定かでない時間の重みに耐えることなど、俺にできるはずがない。

できるはずがなかった。






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