その日の午後、瞬の見舞い帰りの星矢と紫龍が俺の部屋にやってきた。

「氷河―! おまえ、なんで瞬のとこに見舞いに行かねーんだよ?」
「瞬が心配していたぞ。病人に心配をかけてどうするんだ」

いつかは瞬が自分たちの許に帰ってくるものと信じていられる星矢と紫龍に、俺は一瞬妬ましさを覚えた。

女神はまだ、星矢と紫龍には、瞬の病名もその病気の意味するところも告げていない――らしい。

星矢の方が、俺よりも余程前向きに、瞬を励ましてやれるだろうに。
そして、紫龍の方が、俺よりも余程理性的な助言を瞬に与えてやることができるだろう。


俺は――俺は、一輝のようにもなれない。
瞬の選択を、その選択の正しいことを信じてやる強さも、俺にはなかった。


「明日、必ず来させるからって、俺、瞬に約束してきたからな。花でも買って、腰を低くして見舞いに行くんだぞ!」

瞬の威を借りた星矢が、偉そうに俺に命令する。
俺は、その命令を畏まって聞き入れるしかなかった。






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