「瞬、頑張って闘ってみるか。俺と」

意を決して、俺は、瞬の耳許で囁いた。

「氷河?」
「もしかしたら、苦しいだけで、そして、結局は負けてしまうかもしれない。だが、最初から全てを諦めるより、ずっと後悔はないはずだ」

「……うん。僕は逃げない。僕は闘うよ」
「そうか……。そうだな」

誰よりも強い力を秘めているはずの瞬の腕が、すがるように俺にしがみついてくる。
だが、瞬の腕は、これまでどんな時にも、俺にすがるためではなく、俺を抱きしめるために存在した。

病人に会いに来ない俺を心配する瞬に、女神は、おそらく瞬に病名を告知したのだろう。
瞬は、俺がぐずぐずと迷っている間にとっくに答えを出し、そして、いつまでも姿を現さない俺を、逆に心配していてくれたに違いない。

「氷河が僕を見ていられなくなって、氷河がどんなに泣いたって、僕は氷河と生きていたいから」
瞬の声と言葉もまた、俺に力を与えるために存在する。

「闘わないまま負けるなんて、僕は、絶対にいやだ」

「おまえらしい答えだ……」

それは、考えるまでもなく、わかりきっていた“答え”だった。


瞬らしい――瞬の“答え”。


瞬は、花ではなく、自分の意思と力を持った人間なのだ。






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