『僕は逃げない。僕は闘うよ』 俺は、どうやら、サンルームの籐の肘掛け椅子でうたた寝をしてしまっていたらしい。 耳許に囁きかけるような瞬の声は、俺の記憶が作り出した幻聴だったようだ。 春が間近い。 冬は、間もなく終わる。 暖かい陽光が、俺の周りに満ちていた。 あれからどれほどの時が過ぎ、いくつの冬と春を迎えただろう。 ふっとまた、あの時の瞬の言葉が思い出された。 『闘わないまま負けるなんて、僕は絶対にいやだ』 あの言葉を告げた時、瞬は既に運命に勝利していたのだ。 もうすぐ春がくる。 瞬が好きな、花の咲く季節だ。 Fin.
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