「瞬。心配事かゲロ」

そんなある日の午後、三時のおやつを一緒に食べながら、氷河ガエルは瞬王子に尋ねてみたのです。
返ってきた答えは、意外なものでした。

「うん……。隣国のウートポス国の氷河王子様が行方不明なんだって……」
「へ……? ゲロ」

「あ、カエルさんはいつも、氷河が来る時にはお散歩に出てるから知らないんだね。あのね、このところ、毎晩、隣国のウートポス国の氷河王子様が僕の部屋に来るの。もしかしたら、あれは氷河の幽霊で、氷河はどこかで死んでしまってるんじゃないかしら……って、僕、不安になって……」

「……それで、沈んだ顔をしていたのかゲロ」

氷河ガエルは、本当のことを瞬王子に告げてしまいたいと思いました。
そうしたら、少なくとも、瞬王子の心配事を一つ減らすことができます。

けれど――。
自分がカエルなんかにされていることを、氷河王子はどうしても瞬王子に知らせてしまうことができませんでした。

カッコ悪いからです。
氷河王子は、なにしろ、自分のことを世紀の二枚目だと思っていましたからね。


「そんことはないゲロ。元気を出すゲロ」
「でも……」
「ほんとに幽霊なのなら、来た痕跡も残さないはずゲロ。そうなのかゲロ?」

「あ……」

言われてみれば、その通りです。
幽霊がキスマークなんか残していくはずがありません。

だとしたら、あれはやっぱり本物の生きている氷河王子なのです。
そう思ったら、瞬王子の心はふわりと軽くなりました。


「ありがとう、カエルさん! 優しいんだね、ありがとう!」

「瞬……ゲロ


瞬王子に頬擦りされて、氷河王子は、自分の嘘にちょっとだけ良心が咎めたのでした。






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