「……氷河はどうして夜しか来てくれないんだろう」
「事情があるに違いないゲロ」

「だったら、その事情を説明してくれても……」
「きっと瞬に心配かけたくないんだろうゲロ」


最近の昼間の瞬王子は、いつも憂い顔です。
氷河王子が本物の氷河王子だと納得できたら納得できたで、新しい不安が瞬王子の小さな胸を痛めつけるのでした。、


「そんな……。氷河が何か困ってるんだったら、僕、氷河の力になりたいのに。何も知らされないで、不安な思いしてるよりだったら、氷河のために何かしたいよ、僕……」
「言わないのは氷河の思い遣りなんだと思うゲロ。元気を出せゲロ」

「カエルさん、優しいんだね」
「そんなことないゲロ」


毎晩会えるから安心――というわけにはいかないのが、恋する人間の性というものです。
恋する人間にとっては、離れている1分1秒が、永遠のようにも感じられるものですからね。


「氷河とも……こんなふうにお話したいな。僕、氷河とほとんど口きいたことないんだ。1度、氷河のお城に招かれて、ダンスを踊ったことがあるだけなの」
「そうだったなゲロ。違った、そうだったのかゲロ」

「うん……。お后様選びのための舞踏会だったらしいけど、氷河ったら、急に僕にダンスを申し込んできたんだよ。きっと、招待されてたどのお姫様もお気に召さなくて、でもはっきり言うとお姫様たちを傷付けるから、あんな冗談でその場をごまかそうとしたんだね。それで僕、優しい人なんだなって思ったの」

「……それは違うゲロ」

「え?」
「なんでもないゲロ。元気だせゲロ」
「うん……。でも、心配なの」


自分が正直になれないせいで、瞬王子は憂い顔なのです。
氷河ガエルは、瞬王子を必死になって慰めました。

「毎日会いにはきてくれるんだからゲロ。きっと氷河王子は瞬のこと、すごく好きなんだゲロ」
「でも……毎晩あんなに慌しくて、あれじゃ、氷河が何を考えてるのかもわからない……。僕は……カエルさんとこうしてるみたいに、氷河とお話したいの」

「瞬……ゲロ」

「僕、贅沢なのかな……」
「……そんなことないゲロ……」 


瞬王子のささやかな望みを聞かされた氷河ガエルは、毎晩の××だけで満足しきっていたてた自分自身を、ひどく恥ずかしく思ったのでした。






【next】