さて、氷河ガエルが瞬王子のベッドに潜り込んでから半月が経った頃。
突然、エレホン国に、カミュ代理国王が訪ねてきました。

名目上はエレホン国の国王への表敬訪問と言いながら、エレホン国王との話はそこそこに済ませ、カミュ代理国王は早速、瞬王子との会談の場を設けさせたのです。

カミュ代理国王の真の目的は、もちろん、瞬王子の近くにいるに違いない氷河ガエルの様子を探ることでした。


「ところで、瞬王子は最近カエルを見かけませんか」
「え? カエルさん?」

どうして、カミュ代理国王はカエルさんのことを知っているのだろうと、瞬王子は首をかしげました。
その時、さらりと流れた瞬王子の髪の間に、カミュ代理国王が目聡くも見つけたもの。

「むっ……」

それは、昨夜、氷河王子が瞬王子の首筋につけたキスマークでした。
「これは……もしや……」

カミュ代理国王は、突然ものすごーく嫌な予感に襲われてしまったのです。
それは、まさかまさかと思いつつ、どうしても打ち消しきれない最悪の推理でした。

その悪い予感を確認するために、カミュ代理国王は瞬王子に再び尋ねてみました。

「瞬王子。最近、氷河がこちらにお邪魔しているのではないですかな。突然失踪したもので、私どもも心配しているのだが」

「あ……はい。あの……夜だけ。朝になると消えてるんです」

瞬王子は、なにしろ嘘のつけない王子様です。
嘘つきは泥棒の始まりだと教えられて育ってきたのです。

頬を真っ赤にして瞼を伏せてしまった瞬王子の様子を見て、カミュ代理国王は全てを理解しました。

「な……何とゆーことだ! 一時的にとはいえ、あの魔法を破るとは、なんというエネルギーだ! くそっ、私は氷河を見くびりすぎていたのかっ !? 」

一般的には、そのエネルギーは性欲と呼ばれています。
が、瞬王子の前でその言葉を口にするのは、さすがのカミュ代理国王にもためらわれたのでした。


「こ…こうしてはおれん。氷河を連れて帰らねば!」
このまま、氷河王子を放置しておいたら、氷河王子はますます図に乗って、純真で名を馳せたエレホン国の瞬王子をどんなふうに変えてしまうかわかったものではありません。


かくして、カミュ代理国王は、首に縄をかけてでも、氷河王子をウートポス国に連れて帰る決意をしたのでした。






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