ひどく傲慢だと思った次の瞬間には、迷子のように悲しそうな目になる氷河の態度に、僕は混乱していた。
すぐに氷河を追いかけるのも、そしてまたあの青い瞳に見詰められるのも恐くて、僕は再びベッドの上に戻り、自分の膝を抱えた。

やがて、氷河にあんな冷たい言葉を投げつけさせた“あの人”を憎み始めている自分に気付く。
僕にはあの人しかいないのに、そんなことを考え始めている自分自身が信じられない。

まるで、氷河ではなく、僕自身が夢路を辿っているようだった。
しかも、これは悪夢だ。


氷河も――こんなふうだったんだろうか。
ただ一人、信じられるかもしれないと思った相手。
その人に受け入れてもらえなかったら、氷河の心には何が残るだろう。

それは、絶望――なのかもしれない。

あの、災厄しか入っていなかったパンドラの箱にすら、希望という微かな光があったのに。


自分の悪夢を恐れている場合じゃないということに気付いて、僕は、膝を抱え込んでいた腕を解いた。
氷河に、せめて、僕が彼を嫌っているわけじゃないということだけでも伝えなければならないと、僕は思った。






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