「ぼ……僕のせいなら……!」

氷河が僕の前からいなくなる。
氷河のいないひとりぽっちの生活。
いつのまにかそんなものに耐えられなくなっている自分に後押しされて、僕はラウンジに 飛び込んでいた。

「僕のせいなら、行かないで! 僕、ちっとも怒ってなんかない。氷河にここにいてほしい。僕……僕は……」

星矢と紫龍と、そして氷河が、一斉に、突然の闖入者に視線を投げてくる。
でも、そんなことに、僕はもう構っていられなかった。


「は……ん。 瞬が怒るようなことをしでかして、肘鉄を食ったせいか。おまえが、ここを出るの何のと言い出したのは」
驚きに目をみはっていた紫龍が、ふいに氷河に薄笑いを作って見せた。

「…………」
氷河は――無言。

僕も、続く言葉を見付け出せなくて、ただ、すがるような視線を氷河に向けるだけだった。


黙り込んでしまった僕と氷河とを見比べていた紫龍は、少しの間を置いてから、長い溜め息を漏らした。
「──本物を見たら、一発で思い出すと思ったんだがな……」
「うん、俺も……。まさか、こんなことになるなんて思ってもいなかったぜ」


「……?」
僕には、紫龍と星矢が何を言っているのか、まるでわからなかった。






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