「あのなあ、瞬」

やがて、星矢が困ったように眉をしかめ、ラウンジのテーブルの上にあった小さなアルバムを僕に差し出した。

「何かの役に立てばって、沙織さんが貸してくれたんだけどさあ。それ、誰と誰だかわかるか?」

アルバムの中の写真は、背景の季節は一枚一枚が違っているけど、そのほとんどが、二人の人間が写っているものばかりだった。

「…………」

そこにいたのは、僕と氷河だった。

氷河にはこめかみの傷がなくて、どの写真でも優しい目の持ち主に映っている。
彼の横にいる僕は、まるで僕じゃないみたいに明るく微笑んでいた。


「………これ、何?」
「何って言われても……見てわかんないか? おまえと氷河だよ、つい半年前までの」

「…………」

僕は星矢の言ってることの意味が、まるでわからなかった。
本当に理解できなかった。

だって、僕が氷河と会ったのは、ほんの1週間前のことだ。
それまで、僕は氷河を知らなかった。
この城戸邸で、星矢と紫龍と沙織さんと、それから、いつもふらりとどこかに行ってしまう兄さんを家族のように思って暮らしていた。

僕の知り合いに、こんな鋭くて恐いほど青い目をした人なんていない。

なのに、その写真の中の僕は、春と夏と秋と冬とを、氷河と共に過ごしている――。






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