結局、僕は、氷河から逃げ出した。

雨の中に。

みずいろの雨。
綺麗で哀しい色の、でも激しい雨。


強い雨でよかった。
みずいろの雨は、僕の涙を流し去ってくれる。

でも、これはいったい、何のために流されている涙なんだろう?

僕は、自分で、自分の馬鹿さ加減を哀れんでいるんだろうか。
甘くて、甘えてて、氷河に守られていることにさえ気付かずに、僕を必死の思いで守ってくれてた人を恐がっていた自分を哀れんで、僕は泣いているんだろうか?


――叱ってくれたらよかったのに。
甘えるなと。
強くなれと。

僕を敵の前に引っ張っていって、こいつを殺せと、そう言ってくれたらよかったのに。


なのに、氷河は、僕の前では、いつも微笑ってた。
苦しかったろうに、辛かったろうに、僕に哀れまれてることにだって気付いていたろうに、何も言わなかった。



狂気のようだと思っていた氷河の目。

あれは、僕への優しさという狂気だったんだ――。






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