遠くまで


〜 シェパさんに捧ぐ 〜







地上には平和が訪れていた。

今、地球上には、戦争をしている国はない。
民族間の争いもなければ、信じる神が異なるという理由で対立している者たちもいない。

静かに、穏やかに、日々は過ぎていく。


瞬は、もうずっと長いこと、そんな日の訪れを願っていた。
そして、そんな日は決して来ないとも思っていた。

だが、現実に、その日は瞬の許を訪れ、そんな夢のような世界で、瞬は、また朝を迎えた。


朝の空気は、この時期にしては少し冷たい。
だが、瞬は寒さも冷たさも感じてはいなかった。

世の中で最も温かいものに 一晩中くるまっていたから。


「おはよう、氷河」
「ん」


今日もまた、昨日と同じように、大切な大切な一日が始まろうとしていた。






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