「瞬、いったいどうしたって言うんだ。また俺をクーラー代わりにして外出というのなら、それ相応の代価を払ってもらうぞ、俺は」
「これ以上、氷河に代価を支払ってたら、僕の身体がもちません! ──だって、氷河にでないと事情を説明してくれそうにないんだもの」

「事情って……」

瞬に手を引っ張られて玄関ホールにやってきた氷河は、そこに、見慣れていながら見慣れぬものを見い出して、僅かに眉をひそめた。

背丈も同じなら、髪の色から瞳の色も同じ。
肌の色は氷河の方が浅黒いが、体格もほとんど変わらない。

最も大きく異なるのはその表情で、氷河自身、さほど親しみやすい印象を他人に与えるタイプではなかったが、彼の目の前の鏡に映っている男は、氷河よりもはるかに冷たく無機質な眼差しをしていた。

「何だ、これは」
「ふん。これが私のコピーか。この私と同じ遺伝子を持つ男が、城戸の家などで居候をしているとは情けない」

二枚の鏡が言葉を交わす。

「何者だ、貴様」
「見てわからないか」
「嫌味な若年寄りに見える」
「私には、おまえが、脳みその足りない青二才に見えるが」


二人の出会いは、最悪にして険悪だった。






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