翌日、城戸邸の青銅聖闘士たちは、彼の失踪の事実を知らされた。 グラード財団の遺伝子研究所の特定受精卵を全て消却して、彼はどこへともなく姿を消してしまったらしい。 「確かに財団は……財団を支配する優秀なコンピュータのように、彼を遇していたところがあったようね」 『私には、彼の存在は、つい先日まで知らされていなかったのよ』と前置いて、沙織は、氷河たちに、その知らせを持ってきた。 財団内に優れた機能を持つコンピュータが配置されていることなど、当たり前のことすぎて、わざわざ総帥に知らせるほどのことではなかったのだろう。 コンピュータを設置した者たちにとっては。 財団の経営方針を決める意思決定機関の中枢を失ったグラードの中枢部は混乱を呈し、それからしばらくの間、経済誌で愚弄されるような経営判断ミスを連発することになった。 |